レイアップ
「ほら、やっぱり変だよ」
ミウの声で我に返った。膨れっ面でこっちを見ながら、また指先でボールを回している。
「パスを・・・・きなかった・・・」
なんだか悔しくてしかたがなかった。悔しさと悲しさと恥ずかしさがぐちゃぐちゃに入り交じって、唇をぐっと噛み締める。下唇が切れて血の味が口の中に広がった。
「え?・・・なんていったの?」
「監督のパス・・・、受けとれなかった。綺麗なチェストパスだったのに、そのボールはおれには重すぎた。受け止める才能がおれには無いんだ」
最後は語尾が震えていた。ミウは、ただ黙ってこっちを見つめる。
「才能があるとか、天才だとか、おれがちょっと周りよりバスケが上手いからって、皆がチヤホヤしてくれた。いつの間にかおれもだんだんその気になってた。自分は特別な存在だって。そして、気がつくと孤立していた。周りには誰もいなかった」
なんでバスケやめたの?
昨日のミウのセリフがぽつりと浮かぶ。