レイアップ


自分というゴールを守る為に必死で距離をとり、偽りの自分を見繕い、素の自分隠す様に相手を遠ざける。そんなことで恋愛なんか成立するはずがなかった。


保育の授業で、男は女より性欲に目覚めるのが早いと習った事があるけど、恋愛に関しては逆だと思う。

男は先に性欲に目覚め、女は先に恋に目覚める。

恋と性欲とは初め別々に存在するのだ。だから、男は初めて人を好きになった時、今まで頭と腰の周りを渦巻いていた欲望の煙がピタッと消える。それはほんの一瞬だけど、確かにその瞬間は必ずある。一面曇った空に真っ青な晴れ間が差し込む感覚。


セックスしたい思うことと、好きになることとは別物なのだ。

そんなことを、おれは高校一年になって初めて知った。


(もう少しミウに近づいてみたい)

めったにない心の動きに変な焦りを感じる。

夏休みもそろそろ折り返し地点。8月が終われば、また掃き溜めの様な学校生活が始まる。高校生の夏は短い。

今まで太陽にあてられ熱を上げてきた時間が、ジワジワと加速する。

おれは、思わずミウにいった。


「花火って好き?」


ミウはきょとんとした顔で首を傾げた。


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