レイアップ
『シュウには誘わなけゃいけない大切な人がいるんじゃない?』
ミウの言葉が無意識に頭に浮かんだ。ちがう!ユキはそんなんじゃないって。
そう、本当にそんなんじゃないんだ。そんなんじゃなないはずなのに・・・。
そういう女の子の態度をおれは幾度も目にしたことがある。自分に好意を寄せている女の子の態度。おれは決まって、その子の気持ちに気付かないふりをして、鈍感な自分を演じる。そうすれば相手を傷つける事もなく、自分が危害を被る事もない。
「気付いてる癖に、なんでなにもいってあげないの?」
いつもユキにそういわれて、いつもおれはトボケた顔をした。
「なんのことだよ?」
でも、今目の前にいるユキを目にして、おれはすっトボケた顔もできず、声を発する事もできず、ただただ、目を丸くして面食らっているだけだった。
選手交代。たまらず頭のなかで、ベンチに向かって手をクロスしているおれがいた。