レイアップ
それからたっぷり部屋で時間をもてあまして夜になった。とっくにやり飽きたゲームの電源をセーブもせずに落とし、仕事から帰ってきたおふくろに一声かけて玄関を出る。リビングからおふくろの声追ってきたが返事はしなかった。
「あら、懐かしいわね。ユキちゃんとデート?」
まったくデリカシーのかけらもない母親だ。こういう時くらい黙って送り出してほしい。せっかくユキのことは考えないようにしていたのに、おふくろのせいでかすかな罪悪感が胸の奥で疼いた。
「お土産よろしくねー」
口数の多い無神経なおふくろに怒鳴り返してやろうかとも思ったが、逆らうとあとが怖いので、屋台で何か買って帰ろうと思いながら、おれは浮き足だった夏の夜へ歩き出した。