レイアップ
遅れてゴメン。そう口に出しかけた時、おれは一旦浴衣を着た女の子の前でピタリと止まった。青いバラが清楚に散りばめられた白の浴衣と空色の帯。浴衣ばかりに気をとられていたが、金髪のはずの髪の毛は、綺麗に後ろで結ってある黒髪の女の子だった。
どうやら人違いのようだ。遠くでドンと空気が弾けるズシリと重たい音がして、夜空が光りに照らされた。河川敷で花火大会が始まったらしい。
ここからでも十分花火は綺麗に見えて、パラパラと音をたてて消えていく光りに目を奪われそうになる。
「来てくれたんだね」
目の前で声がしておれはハッとなり、さっきの女の子に視線を戻した。
おれの前に立っていたのはユキだった。
「ほら、なにぼーと突っ立てんのよ。花火始まっちゃったよ」
そういってユキはおれの腕を掴んだ。おれは一瞬フリーズした後に直感的にすぐに分かった。
フェイクだ。
おれはミウのフェイクにまんまと引っ掛かった。