レイアップ
おれの問いにユキは突然足を止めた。
「シュウイチがバスケを始めた頃かな・・・」
今度は鋭さも冷たさももたない歯切れの悪い声だった。おれの方をじっと見つめたユキの目の中は、不安定な熱がゆらゆらと揺れている。しかし、その熱は次第に瞳の奥へと消えて行き、かわりに青く冷たい光りが静かに姿を現した。何かを決意したユキのその眼光におれは思わず逃げ出したくなったが、考える間もなく追い詰めるように次の言葉がやってきた。
「私がシュウイチを好きになったのもその頃だよ」
決定的なセリフだった。ユキはくるりと顔を前に向けまた歩きだす。夜空には大きな光りの大輪が咲いては消えていた。こうやって同じような花火を見ていたあの頃から、既にユキはおれの知らないユキに変わっていたのかと思うと、あまりにも自分が鈍感すぎて情けなくなる。
しかし、それと同時に一つの疑問が浮かんだ。
「なんで今なんだよ」
おれは自然とその疑問を口に出していた。