不機嫌な彼のカミナリ注意報2
 不機嫌色を乗せて呆れ口調でそう言われても、私は口元を緩めてしまいそうだった。

 だって風見さんは今、“誤解”と表現した。
 そう発言するのは、私と笹岡さんの間には何もないとわかってくれてる証拠だから。

「なんでニヤけてるんだ」

「風見さんにはなんでもお見通しなんだなぁと思って」

「不器用で鈍くさいお前が二股なんてできるかよ」

 好きな人に微塵も疑われていない。
 それがこんなにもうれしいことだと、今初めて知った。

「で、清瀬さんのマンションに、風見さんは行ったんですか?」

 おどけるように下から顔をのぞきこむと、風見さんが呆れるように鼻をフンと鳴らす。

< 138 / 299 >

この作品をシェア

pagetop