不機嫌な彼のカミナリ注意報2
「私って臆病だから、清瀬さんのことは風見さんに自分から言い出せてなかったと思うもん」

 きっと一人でモヤモヤして、風見さんには勇気を振り絞ってもなにも聞けなかったかもしれない。

『風見さんだって、清瀬さんのマンションまで行ったそうじゃないですか』

『ふたりで飲んで、家まで送るような状況になったんだとしたら、今の俺となにが違うんですかね?』

 あそこまで毅然と藤野くんが言ってくれたことで、私は助けられたのだと思う。

 清瀬さんのマンションに行ったことは、私の耳に既に入ってるのだという事実と……
 風見さんが酔った清瀬さんをただ送っただけと言うのなら、藤野くんも私にまったく同じことをしただけだという主張。
 そのふたつを、鋭く簡潔に盛り込んだ発言だった。

 自分のことは棚に上げてなにをキレてるんですか?と、少し嫌味も込められていた気がする。



< 159 / 299 >

この作品をシェア

pagetop