不機嫌な彼のカミナリ注意報2
「今日は何しに来たんだよ。大木の話をするためじゃないだろ?」

 不機嫌にそう言いながら、俺は上着の内ポケットからスマホを取り出した。

「……電話?」

 スマホを操作する俺に対し、栞がすかさず問いかける。

「仕事の話なら、田中も呼ぶ」

 営業担当である田中も交えて打ち合わせをしたほうが……
 いや、俺はいなくていい。ここは田中とバトンタッチしたほうがいいに決まっている。

 ……なのに。

「呼ばなくていいよ」

 そう言って、スマホを操作する俺の手に、栞が上から細い手を乗せてきた。

< 189 / 299 >

この作品をシェア

pagetop