不機嫌な彼のカミナリ注意報2
「あ、そうそう! うちの部長がね、今度の水曜日の夜に懇親の意味で食事しないかって言ってたわ」

「何度も言ってるが、田中に言え」

 ほかに話がないならもう帰れとばかりに、俺は栞に背を向けて、エレベーター方向に歩き出す。

「ちょっと待ってよ、太雅!!」

 後ろから叫ぶようにそう呼ばれてしまい、俺もピタリと歩を止めざるをえなくなった。
 踵を返し、俺はツカツカと栞の元まで戻った。

「頼むから、その呼び方で呼ばないでくれ」

 キロリと睨んで俺がひとことだけそう言うと、栞が申し訳なさそうに両手を顔の前で合わせた。

「ごめん、つい……」

< 191 / 299 >

この作品をシェア

pagetop