不機嫌な彼のカミナリ注意報2
「今日の夜、楽しみにしてたんじゃないのか? 昨日わざわざ電話で確認してきただろう?」

「そう……なんですけど」

 田中さんがいなくなると、途端に力が抜けて、ヘラリと小さく笑うことしかできない自分がいた。
 あと少し、がんばって笑わないといけないとわかっているのに、情けない。

「風見さんらしくないな、と思ったんです」

「…は?」

「接待よりデートを選ぶなんて、風見さんらしくありません」

 小さくつぶやくようにそう言うと、風見さんはしっかりと眉間にシワを刻み、黒髪をかきあげた。

「お前は本当に……人の気も知らないで」

 苦虫を噛み潰したみたいにポツリと言葉を零すと、風見さんはフイっと私から視線をそらせる。

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