不機嫌な彼のカミナリ注意報2
9.俺にとってアイツは…
―――― 9. 俺にとってアイツは…

 定時で何とか仕事を終えてオフィスの外へ出ると、待ってましたとばかりに営業部の田中に捕まった。
 冗談ではなく本当に迎えに来たのかと呆れつつ、田中と共に俺は会社をあとにする。

「駅をはさんだ反対側にある料亭ですから」

 歩きながらの田中のその言葉に、俺は無言で首を縦に振った。

 聞かなくてもそうだと思った。
 そこは俺も以前に何度か訪れたことがあり、営業部の接待で“料亭”と言えば、十中八九そこだ。

 今日の夜はアイツと飯を食う約束を前々からしていたが、定時を迎える少し前に、予約していたレストランにキャンセルの電話を入れておいた。


『接待よりデートを選ぶなんて風見さんらしくありません』

 ――― ふざけるなよ。無理しやがって。

『風見さんはやっぱり不機嫌でぶっきらぼうで、無愛想で偉そうにしてなくちゃ』

 ――― 今にも泣きそうな顔しているくせに。

< 227 / 299 >

この作品をシェア

pagetop