不機嫌な彼のカミナリ注意報2
 そんな栞を見た瞬間、今日のアイツの顔がまた頭をかすめた。

 今夜のデートのことを、アイツが楽しみにしていたのは知っている。
 俺が誘う前に自分から言い出したくらいだから。

 昨夜もわざわざ電話をしてきて、俺の仕事が早く終わりそうかどうか遠回しにたしかめてきた。
 今日だって、朝からわかりやすいくらいに元気だった。

 なのに、田中が強引に俺を接待に誘うのを見て、お人よしなアイツは気を遣ったのだ。

 アイツは……いつもそうだ。
 基本的に天然で不器用で鈍くさいくせに、他人のために自分が身を引く。

 そんな謙虚なアイツを見ていたら、言っておかなければと思った。

 ――― 俺と、栞の関係を。


< 230 / 299 >

この作品をシェア

pagetop