不機嫌な彼のカミナリ注意報2
 宴が進む中、先方の部長が酒のせいで赤い顔をして上機嫌になっていた。
 これで少しは仕事もスムーズに運ぶと安心したところで、俺はそっと席を立ってトイレへと向かった。

 料亭の長い廊下の突き当たりにあるトイレに行き、ついでに鏡の前で身だしなみを整える。
 普通の飲み会ではないのだからと、ネクタイと共に気を引き締めてトイレを出たのだが……

「!……お、お前……」

 近くの壁に背を預け、俺を待ち構えるようにそこにいたのは栞だった。

「なんでこんなところにいるんだ」

「ん? 私もトイレ」

「嘘つけ」

 わざとらしい嘘を言い放ち、栞は俺の反応を見てクスリと笑う。

「だって、部長たちの前じゃ私的な話はできないでしょう?」

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