不機嫌な彼のカミナリ注意報2
「今さら……なにを言ってるんだ」

 栞は勝手な女だ。別れてから八年……その年月を、まったく無視しようと言うのか。

「だって、本当に会いたかったの」

「ふざけるな」

「ふざけてなんかいないわ」

 ふざけてるじゃないか、と堂々巡りの言葉を言い返しそうになったが、そこで一旦ぐっと堪えた。

 呆れてものが言えない。
 俺をここに引っ張り出したのは、ただ会いたいという理由なのか?

『大きな仕事ですし……少しでも知ってる人がいたほうが心強いじゃないですか。……だから、今日の接待にも風見さんに来てほしいと、田中さんに要望したのだと思います』

 アイツの言葉が、脳内でリフレインする。

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