不機嫌な彼のカミナリ注意報2
 あのお人よしめ。
 そうやって栞をかばうような想像をしていたのに、栞の本心はまったく違ったじゃないか。

 そんな考えが脳裏をよぎると、純真で人のいいアイツばかりか、俺までなぜか栞に裏切られた気持ちになった。
 その残念な思いが塊となり、胸をギュッと締め付ける。

「私、あの人と別れたって……この前言ったじゃない」

「そういう問題じゃない!!」

 俺の胸の内を感じ取れないのか、栞がノーテンキにそう紡いだ言葉に、俺は思わず過剰反応してしまった。

 前にも栞が口にした“あの人”とは、きっと俺の知る人物だろう。
 だが……そんなこと知るかよ。

「怒らないでよ。私、太雅とこの仕事で偶然再会したときにね、思ったの。やっぱり私たちは再び出会う運命だったんだ、って」

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