不機嫌な彼のカミナリ注意報2
 咄嗟に質問された意味がわからなかったのか、栞は一瞬キョトンとしていたが、そのあとすぐに「もちろんよ」と小さく返事をした。

「悪いが……それは愛情じゃないと俺は思う」

「愛よ。 愛じゃなきゃ、なんなの?」

「――― ただの、情だ」

「………」

「前に進めよ、栞。後ろを振り返って後ずさりするな。お前らしくない」

 きっと栞は俺と再会して、懐かしい感情でいっぱいになったのだろう。

 たしかに俺たちは、あのころは思い合っていた。
 久しぶりに俺の顔を見て、その感情が蘇ったのだと錯覚しただけだ。

 それは、愛じゃない。懐かしいというただの情だ。

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