不機嫌な彼のカミナリ注意報2
 やんわりと断りの言葉を述べる私を見て、染谷さんは肩を落としながらもにこりと笑った。

「ホワイトデーだから、っていうのは口実なんだけどな……」

「……え?」

「俺自身が、緒川さんと飯食いたいって思っただけ」

 堂々とそう言ってのけた染谷さんが、私の反応を伺うようにじっと見つめる。
 その視線がだんだんと突き刺さってくるような錯覚に陥って、私は無意識に視線を逸らせた。

 バレンタインのお返しだとか、そういうことではなくて、普通に食事のお誘いだったみたいだ。

 染谷さんがうちの部に異動で来てからもう二ヶ月半が過ぎようとしているけれど、私と特別仲が良いというわけではない。
 もちろん、プライベートでの付き合いもない。
 歓迎会以外、一度も会社の外で一緒に過ごしたことなんてないのに……

 なぜ、私を誘うのだろう。

 不思議に思ったのは、なにかそこに特別な感情というか意図が含まれているような気がしたから。

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