不機嫌な彼のカミナリ注意報2
『仲里と以前付き合っていたことはたしかだが……いいか、お前が思い悩む必要はまったくない』

『俺はお前に嘘はつかない。だからお前も俺を信じろ』

 思い返せば、あの時の風見さんはいつもより余裕がなかった気がする。
 それ以上に私のほうが余裕なんてなくて、その時は気づかなかったけれど。

 余裕のない風見さんなんて、天然記念物と同じくらい珍しい。

「俺、絶対あのふたりは怪しいと思うんだ。緒川さん、浮気されてない?」

「……いえ……」

「とりあえず、飯を食いながら話そうか」

 相変わらず笑みを浮かべたまま、染谷さんが立ち上がって私の腕を取る。

 その勢いのまま椅子から立ち上がってしまったとき ―――

「お疲れ様~~!」

 入り口のほうから軽快かつ大きな声がして、その方向に目をやると、懐かしい人がそこに立っていた。

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