不機嫌な彼のカミナリ注意報2
「本当なら今夜、雰囲気のいい店で食事をしながら、お前にこういう話をしようと思ってたんだ」

 どんどん、風見さんの不機嫌が増殖していくのがわかる。メーターの数値で言うと急上昇だ。

 イライラさせている原因は私自身なのだろうけれど。
 今のこの現状で、かける言葉が見つからない。

「なのに、こんな路上で、こんな話をするハメになるとは」

 やってられないとばかりに、ブツくさと文句めいた文言を吐き出しながら、風見さんが私の左手からその箱を奪い取る。
 そして、あっという間に中の物を取り出して、私の左手を引っ張りながら薬指にそれを嵌めた。

 それは……
 外灯にわざわざ照らされなくても、この薄暗闇でもわかるほどキラキラとしたものだった。

 プラチナのリングにしっかりと鎮座しているのは、透明感あふれるダイヤモンドだ。


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