不機嫌な彼のカミナリ注意報2
 塚原に礼を言われ、うれしそうに顔を紅潮させているところなんかは、素直にかわいいと思う。

「この件は藤野に。……あ、待て。やっぱり染谷に」

 手にしていた書類を戻しながらそう言うと、緒川はさらにはにかんだように笑った。
 ……会社でそういう顔をするな。一瞬、仕事モードから外れそうになる。

 そういえば、年が明けてから俺はずっとハードな仕事漬けだ。
 俺のマンションからアイツのアパートまで徒歩五分の距離だというのに、最近平日は連絡を取ることすらしていない。
 そんな不精な俺をアイツも気遣ってか、連絡を寄越さないでいる。

 我慢させているのだろうな、という自覚はある。

 アイツの心の広さに甘えているのは、俺のほうだということも。

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