不機嫌な彼のカミナリ注意報2
 酔った“フリ”をしていたのか。

 俺は今日、昼間にエレベーターホールで声をかけられたときから今までずっと、この女の策略に嵌められていたのかと思うと、急激に情けなくなってくる。
 相談があると言ったのも、酒に酔ったのも、全部が嘘だった。

 清瀬がどうしてここまで出来るのか、俺にはわからない。

「あのふたりがデキてるのなら、私たちだってこうなってもいいじゃないですか」

 言葉に色気を含ませ、清瀬が今度は正面から俺の胸に抱きつこうとしてくる。
 俺はあわててその肩を押し、それを阻んだ。

「緒川さんは、地味だからモテませんって顔をしておきながら、おいしいところは全部持ってくタイプなんですね」


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