不機嫌な彼のカミナリ注意報2
 ここがマンションの玄関先だということも忘れ、今日の清瀬に対して、俺は初めて怒りを含んだ声を出した。

 最初からこれが目的か。
 報復のターゲットは笹岡だけではなかったのだ。
 アイツを苦しめるために、清瀬は俺を誘ってきた。

「風見さんは悔しくないんですか? 彼女に浮気されて腹が立つでしょう?」

「アイツはそんなことが出来る女じゃない」

 その勢いのまま、「お前とは違う」と続けそうになったが、寸前で辛らつな言葉を飲み込んだ自分を褒めてやりたい。

 アイツの元カレは、どうしようもない浮気男だったのだ。
 そんな男と付き合って、酷く傷ついた経験がある。

 それなのに俺に隠れてこそこそと笹岡とどうにかなるはずがない。
 だいたい、鈍くさいアイツにそんな器用なマネができるものか。
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