不機嫌な彼のカミナリ注意報2
 いや、それよりもまず、問題はこのあとのお昼休みだ。
 お弁当を持った皆口さんが現れて、そこに清瀬さんが居合わせたりしたら、それこそ修羅場になりかねない。
 とりあえず笹岡さんに伝えなくては。

 ポーンとエレベーターの扉が開いて、ごちゃごちゃと足りない頭で考えながら前も見ずに降り立った。

「なにをボーっとしてるんだ」

 その声で、ハッと我に返る。
 俯いていた視線の先には見覚えのある黒の革靴があった。
 そのままゆっくりと顔を上げると、無造作な黒髪の長身が私の顔を覗き込む。

 間近で見る愛しい人の顔は、今日は幾分不機嫌色が消えていた。


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