龍泉山の雪山猫
「はい、温かい汁。ゆっくり食べなさい」
お母さんがくれたお椀を手に取り、わたしはゆっくりと野菜の入った汁を食べた。
「サチ、おいしい?」
わたしの隣に座ってお母さんが言う。お母さんの目には涙が浮かんでいた。
「帰ってきてくれて、ありがとう。」
お母さんの冷たい手がそっとわたしの頭をなでると、突然涙が込み上げてきた。急にいろんな思いが頭を巡る。
怖かった。初めて見る雪山猫。
洞窟に落ちていくときの痛み。
意地悪で、でもわたしを助けてくれたアオ...。
お母さんの弱々しい腕がわたしの肩を抱く。
「ごめんね、サチ。わたしがしっかりしてないから!遠い隣町に行かせて、怖い思いさせて...。ごめんね!」
涙を堪えて言うお母さんの声は震えていた。何も言えずに、わたしはただ首を振った。
「お母さん、がんばって元気になるから。もう、サチが怖い思いをしなくてもいいように、お母さんが隣町に行けるぐらい元気になるからね。」
「い、いいよ...。大丈夫だもん。怖くたって...。お母さんの薬...。」
そうだ、お母さんの薬...。熱を出してたアオにあげちゃった。
お母さんがさっきよりも強く抱きしめ、それから腕を放してわたしを見つめた。お母さんの顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
わたしの顔も同じような顔だったんだろう。わたしたちはプッと吹き出して、そのまま静かに笑った。
「サチ!」
わたしとお母さんが笑う声が聞こえてきたのか、ジンタが勢いよく戸を開けて入ってきた。涙でぐしゃぐしゃになりながら笑うわたしの顔を見て、ジンタも泣きそうになってた。
「馬鹿野郎!心配したんだぞ!」
ジンタの顔を見てわたしとお母さんが笑うと、ジンタは恥ずかしそうに目頭をこすった。
「ジンタ君はね、サチが雪山猫に襲われた後、サチの後を追っていこうとしたんだって。でもおじさんにおこられて帰ってきて、次の日は朝からサチを探しにいってたのよ。おじさんに止められて、大げんかしてまでも山に入っていったの。」
「ちょっとおばさん、そこは内緒!」
「サチが熱を出して帰ってきてからはわたしとつきっきりで看病してくれたのよ。」
「おばさん!」
「サチ、2日も寝込んでて...。ジンタ君、すごく心配してたんだから。」
わたしがジンタを見ると、彼の顔は真っ赤になっていた。
「もーいいから!早く元気になって外出てこいよ!」
ジンタは怒鳴るように言い残して外に出て行ってしまった。
ありがとう、ジンタ。後でちゃんと本人にそう言おう。
お母さんがくれたお椀を手に取り、わたしはゆっくりと野菜の入った汁を食べた。
「サチ、おいしい?」
わたしの隣に座ってお母さんが言う。お母さんの目には涙が浮かんでいた。
「帰ってきてくれて、ありがとう。」
お母さんの冷たい手がそっとわたしの頭をなでると、突然涙が込み上げてきた。急にいろんな思いが頭を巡る。
怖かった。初めて見る雪山猫。
洞窟に落ちていくときの痛み。
意地悪で、でもわたしを助けてくれたアオ...。
お母さんの弱々しい腕がわたしの肩を抱く。
「ごめんね、サチ。わたしがしっかりしてないから!遠い隣町に行かせて、怖い思いさせて...。ごめんね!」
涙を堪えて言うお母さんの声は震えていた。何も言えずに、わたしはただ首を振った。
「お母さん、がんばって元気になるから。もう、サチが怖い思いをしなくてもいいように、お母さんが隣町に行けるぐらい元気になるからね。」
「い、いいよ...。大丈夫だもん。怖くたって...。お母さんの薬...。」
そうだ、お母さんの薬...。熱を出してたアオにあげちゃった。
お母さんがさっきよりも強く抱きしめ、それから腕を放してわたしを見つめた。お母さんの顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
わたしの顔も同じような顔だったんだろう。わたしたちはプッと吹き出して、そのまま静かに笑った。
「サチ!」
わたしとお母さんが笑う声が聞こえてきたのか、ジンタが勢いよく戸を開けて入ってきた。涙でぐしゃぐしゃになりながら笑うわたしの顔を見て、ジンタも泣きそうになってた。
「馬鹿野郎!心配したんだぞ!」
ジンタの顔を見てわたしとお母さんが笑うと、ジンタは恥ずかしそうに目頭をこすった。
「ジンタ君はね、サチが雪山猫に襲われた後、サチの後を追っていこうとしたんだって。でもおじさんにおこられて帰ってきて、次の日は朝からサチを探しにいってたのよ。おじさんに止められて、大げんかしてまでも山に入っていったの。」
「ちょっとおばさん、そこは内緒!」
「サチが熱を出して帰ってきてからはわたしとつきっきりで看病してくれたのよ。」
「おばさん!」
「サチ、2日も寝込んでて...。ジンタ君、すごく心配してたんだから。」
わたしがジンタを見ると、彼の顔は真っ赤になっていた。
「もーいいから!早く元気になって外出てこいよ!」
ジンタは怒鳴るように言い残して外に出て行ってしまった。
ありがとう、ジンタ。後でちゃんと本人にそう言おう。