龍泉山の雪山猫

「さあ、後はこれを髪につけておしまいよ。」
次の日の朝、わたしはミチおばさんに晴れ着を着つけてもらっていた。真っ白な着物は重く、動くのが少し大変。これでちゃんと踊れるのかな．．．。そんなことを考えながら鏡を見ると、ミチおばさんがわたしの髪に金色の髪飾りを指していた。鏡に映るわたしは、わたしじゃないみたいで少し恥ずかしかった。

「はい、これでおしまい。」
そう言ってミチおばさんは満足そうに鏡の向こうのわたしを見ていた。
「とてもきれいよ、サッちゃん。これなら龍神様も喜んでくれるでしょうね。」
「うん．．．ありがとう。」
「お祭りが終わって神社から帰ってくるときは、もっと楽な着物だから。支度は一人でできるよね。神社で着る着物も同じようなものなのよ。ちゃんと全部『嫁入り道具』の箱に入れてあるから。」
ミチおばさんは慣れた手つきでわたしの周りを片付け、何度かわたしの髪を直した。
「今日と、三日後の踊りさえちゃんとできれば、あとは神社の中でゆっくりしていいのよ。誰もいなくてつまらないかもしれないけど．．．。特に夜は怖くなるかもしれないけど、本殿の中に入れば安全だからね。」
「はい。」
わたしは思い着物が息苦しくて、小さく答えることしかできなかった。