龍泉山の雪山猫
「それでね、ジンタが村のおじいさんに怒られて...。」

それからわたしは村での出来事をいくつかアオに話してあげた。顔をしかめてみたり、少し笑ってみたり、変わっていくアオの表情が面白くて少し嬉しかった。

「お前、さっきからあの小僧の話ばかりだな。」
ジンタがいたずらした時の話をしていると、さっきまで私の話を聞いているだけだったアオが急に言った。彼は仰向けになって床に横になり、天井を眺めていた。
「そ、そうかな。」
「あの小僧のことがそんなに気に入っているのか。」
「気に入っているっていうか...子供の頃から一緒にいるし、面白いことするのはいつもジンタだし...。」
「いつもあの小僧といるのか?」
アオは無表情で、声もまるで関心のないような冷たい声だった。

「うーん...子供の頃はよく一緒に遊んだよ。家の手伝いをするようになってからは、あんまり一緒にいないけど、隣町には一緒にいくよ。」
「お前、そいつの嫁になるのか?」
「嫁?!なんで急にそんな話になるの?」
わたしが少し声を上げると、アオは冷たい目でわたしを見た。
「聞かれただけでそれほど焦るなら、ない話ではないようだな。」
「...まだ、決まってないもん。」
「まあ、どうでもよい。とにかく、あの小僧の話はつまらん。別の話をしろ。」
「ちょっと、わたしが話してるんだから、何のことを話すかはわたしが決め...。」
わたしが言い終わらないうちに、急に音もなくアオが立ち上がり、わたしの口を手でふさいだ。

アオは戸の向こうを睨みつけ、何かを探るように耳を潜めていた。
「動くな。」
聞こえないくらい小さな声で囁くアオ。彼の瞳は何かを恐れているように見えた。そして、わたしの口をふさぐ手が少し震えていた。

何か、外にいるの?




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