龍泉山の雪山猫
「貴様、ここで何を企んでいる?」
外から聞こえてきたのは雷のように轟く声だった。アオじゃない...。その声は今まで聞いたことのない恐ろしい響きをもっていた。
「何も企んでおりません。」
次に聞こえてきたのはアオの声だった。
「行き場がなく、この神社に住んでいました。出かけ先で大蛇の毒にやられてからは、ずっとここにいます。」
今まで聞いたことのないアオの丁寧な口調。その声は少し震えていて、弱々しかった。アオの応えを聞いて、雷のような声が大声で笑った。響く声は、わたしの掴んでいた柱を震わせた。それと同時に寒気がして、背筋が震える。わたしは床がきしまないようにそっともう一歩前に進む。
「毒にやられても死ねず、その無様な姿のまま隠れておったのか!」
そう言って雷のような声の人がまた笑った。
「そのまま死ねれば、お前も楽だったろうに!」
その声と同時にドンという音がして、何かが拝殿の壁を横から突き抜けてきた。わたしは怖くて近くの柱に隠れた。
「...っ...。」
壊れた壁の方から声がしたのでそっと覗いてみると、そこにはアオが仰向けに倒れていた。彼の着物はひきさけられ、血がにじんでいた。
「ア、アオ!!」
思わず彼の元に駆けつけたわたしを、アオは鋭く睨んだ。
「アオ、大丈夫?!ひどい傷...。」
「あそこから動くなと言っただろう!」
わたしがアオの傷に手を伸ばそうとすると、彼はわたしの手を打ち払ってわたしに怒鳴った。
「絶対に出てくるなと...。」
アオの声はとても苦しそうだった。
「でも...。」
でも、アオのことが心配で...そう言いたかったのに、わたしの思いは轟くような笑い声にかき消された。
傷ついたアオを照らしていた月明かりが急に陰る。
外から聞こえてきたのは雷のように轟く声だった。アオじゃない...。その声は今まで聞いたことのない恐ろしい響きをもっていた。
「何も企んでおりません。」
次に聞こえてきたのはアオの声だった。
「行き場がなく、この神社に住んでいました。出かけ先で大蛇の毒にやられてからは、ずっとここにいます。」
今まで聞いたことのないアオの丁寧な口調。その声は少し震えていて、弱々しかった。アオの応えを聞いて、雷のような声が大声で笑った。響く声は、わたしの掴んでいた柱を震わせた。それと同時に寒気がして、背筋が震える。わたしは床がきしまないようにそっともう一歩前に進む。
「毒にやられても死ねず、その無様な姿のまま隠れておったのか!」
そう言って雷のような声の人がまた笑った。
「そのまま死ねれば、お前も楽だったろうに!」
その声と同時にドンという音がして、何かが拝殿の壁を横から突き抜けてきた。わたしは怖くて近くの柱に隠れた。
「...っ...。」
壊れた壁の方から声がしたのでそっと覗いてみると、そこにはアオが仰向けに倒れていた。彼の着物はひきさけられ、血がにじんでいた。
「ア、アオ!!」
思わず彼の元に駆けつけたわたしを、アオは鋭く睨んだ。
「アオ、大丈夫?!ひどい傷...。」
「あそこから動くなと言っただろう!」
わたしがアオの傷に手を伸ばそうとすると、彼はわたしの手を打ち払ってわたしに怒鳴った。
「絶対に出てくるなと...。」
アオの声はとても苦しそうだった。
「でも...。」
でも、アオのことが心配で...そう言いたかったのに、わたしの思いは轟くような笑い声にかき消された。
傷ついたアオを照らしていた月明かりが急に陰る。