龍泉山の雪山猫
わたしはしばらく恐くて目を開けられなかった。冷たい風が肌に触れて、何度か身震いした。
勇気を振り絞って目を開けると、アオの白いたてがみを越えた先に、星の輝く夜空が見えた。
少し顔をアオの背中から離して下を見ると、山々がずっと下の方に見えた。
アオは白い雲の間を通り抜けてゆき、満月の輝く雲の上に着くと少し速度を落とした。アオの鱗が月の光に照らされて虹色に輝く。彼は首を曲げてわたしの方を見た。
「お前、寒そうだな。」
「そ、そう?」
「震えてるぞ。」
アオに言われて自分の体が震えているのに気付いた。冷たくなった指の先の感覚がほとんどない。
「寒いなら早くそう言え。」
そう言って、アオの体が突然白く光りだす。握っていたはずのアオのたてがみがなくなったかと思うと、わたしの体が一気に落下した。
「きゃ!!!」
次の瞬間、わたしの体を温かいものがすくい上げた。人間の姿に戻ったアオがわたしの顔を覗き込んでいた。
「やはり、この方が運びやすいな。」
アオはわたしを抱きかかえたまま再び前に進みだした。
「もう少しだ。辛抱しろ。」
温かいアオの腕に抱かれているとだんだんと震えが止まってきた。
「着いたぞ。」
わたしが夜空に見とれているうちに、アオが地面に足を下ろした。辺りを見回すと、そこは所々雲に覆われた草原の上だった。アオがそっとわたしを地面に下ろすと、柔らかい草がわたしの足をくすぐる。
「ここ、どこ?」
どこまでも続くような草原を見渡して、それからアオの顔を見上げると、彼は穏やかな表情で辺りを見回していた。
「ここは龍の住む天界と、人間の住む地上の間にある...。誰も知らない場所だ。名前もない。」
アオはそう言うと、わたしの手を引いて草原の上を歩いていく。しばらくして少し段差があるところを登ると、アオは足を止めた。
勇気を振り絞って目を開けると、アオの白いたてがみを越えた先に、星の輝く夜空が見えた。
少し顔をアオの背中から離して下を見ると、山々がずっと下の方に見えた。
アオは白い雲の間を通り抜けてゆき、満月の輝く雲の上に着くと少し速度を落とした。アオの鱗が月の光に照らされて虹色に輝く。彼は首を曲げてわたしの方を見た。
「お前、寒そうだな。」
「そ、そう?」
「震えてるぞ。」
アオに言われて自分の体が震えているのに気付いた。冷たくなった指の先の感覚がほとんどない。
「寒いなら早くそう言え。」
そう言って、アオの体が突然白く光りだす。握っていたはずのアオのたてがみがなくなったかと思うと、わたしの体が一気に落下した。
「きゃ!!!」
次の瞬間、わたしの体を温かいものがすくい上げた。人間の姿に戻ったアオがわたしの顔を覗き込んでいた。
「やはり、この方が運びやすいな。」
アオはわたしを抱きかかえたまま再び前に進みだした。
「もう少しだ。辛抱しろ。」
温かいアオの腕に抱かれているとだんだんと震えが止まってきた。
「着いたぞ。」
わたしが夜空に見とれているうちに、アオが地面に足を下ろした。辺りを見回すと、そこは所々雲に覆われた草原の上だった。アオがそっとわたしを地面に下ろすと、柔らかい草がわたしの足をくすぐる。
「ここ、どこ?」
どこまでも続くような草原を見渡して、それからアオの顔を見上げると、彼は穏やかな表情で辺りを見回していた。
「ここは龍の住む天界と、人間の住む地上の間にある...。誰も知らない場所だ。名前もない。」
アオはそう言うと、わたしの手を引いて草原の上を歩いていく。しばらくして少し段差があるところを登ると、アオは足を止めた。