龍泉山の雪山猫
「雲が邪魔だな。」
アオは手を地面にかざす。すると、雲が風に流されていった。
雲がなくなったその草原は水色の花が一面に咲いていた。わたしの手のひらほどの大きさの花は月の光を浴びて、風が吹いて角度が変わるとまるでアオの鱗のように虹色に輝く。見たことのない不思議で、そしてとても綺麗な花畑...。

何も言えずにただ目の前の光景を見つめるわたしの髪をアオがそっとなでた。

「今まで様々な場所に行ってきたが、この花が咲くのはここだけ、そしてこの季節だけだ。」
「綺麗...。こんな花がこの世にあるなんて。」
「どうしてもお前に見せてやりたかった。」

ありがとうって言おうとしてアオの方に顔を上げると、彼はわたしを見つめていた。温かい手がわたしの両ほほを包み込む。風が吹いてアオの白い髪をゆらした。
「お前...俺のことが好きだと言ったな?」
「う、うん。」
「俺が龍だとわかっていてもか?」
「うん...。」
「だったらもう一度言え。」




わたしは真剣なアオの瞳を見つめた。

「アオ、大好き。」


だんだんと近づいてくるアオの綺麗な青い瞳に気持ちが吸い込まれていく...。




そっとわたしの唇にアオの唇がかさなった。



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