龍泉山の雪山猫

「やめて！！！！」
思わずわたしは飛び出して、アオを握りしめるカナタの腕に飛びかかった。


「邪魔をするな。」
その腕に届く前に、カナタの尾がわたしの体を弾き飛ばした。
わたしの体はそのまま地面に落ちる。起き上がってカナタの方を見ると、彼はわたしを金色の瞳で睨みつけていた。
「人間ごときが．．．我にたて突くとは．．．。」
カナタはアオを片手に握り締めたまま、地面に落ちたわたしの方に向かってきた。
カナタの尾が再びわたしを弾き飛ばす。今度は柔らかい地面ではなく、拝殿の壁に叩きつけられた。

「．．．！」
痛い．．．。でも、アオを助けたい。どうしたら、どうしたらアオを．．．。

顔を上げると、カナタが真っ直ぐにわたしを睨んでいた。開かれた口からは炎がこぼれ出す。

「焼け死ね、人間。」
カナタのその言葉と同時に、大きな火の塊がカナタの口からわたしに向かって飛ばされた。
速い。こんなの避けられない！

「サチ！」


アオがわたしを呼んだ。そして、冷たい風が吹いたかと思うと、わたしは龍の姿になったアオに掴まれて空の上にいた。神社と、カナタと白い龍が小さく見える。アオは息が荒く、体のあちこちから血を流していた。
地面に立っていたカナタがわたしたちを見上げる。


一瞬でカナタがわたしたちの目の前に現れた。
「ほお、龍の姿を取り戻したか．．．。では手加減はいらぬな。」

「カナタ様．．．。罰はわたしが受けます。ですからこの人間だけは．．．。」
アオは痛みをこらえながら訴えたが、カナタはそれを鼻で笑う。

「本気で言っているのか？見逃すわけがないだろう．．．。それに、この娘を痛めつければ、お前も苦しむだろう？」

カナタがわたしの方に向かって火を噴いた。でもその炎がわたしに届く前に、氷の塊となって砕け落ちた。

「貴様！」
カナタがアオを睨みつける。
「我が炎を止めるとは！本気で我に刃向かうつもりか！」

カナタがアオの胸元をその鉤爪で引き裂いた。

「．．．！！」

声の出ない痛みでアオの体が震える。


痛みで力を失ったアオはわたしを握ったまま地上に落ちていった。カナタがわたしたちを追って飛んできて、口から火の塊を吐き出す。
火の塊はわたしたちを目掛けて飛んできて、アオのお腹に直撃した。

「アオ！」

衝撃でわたしの体がアオの手の中から離れる。
落下の速度が速まり、地面がだんだん近くなっていく。このまま落ちたらわたし．．．。