龍泉山の雪山猫
わたしは昨日使ったまま床に転がっていた竹の湯のみで泉から水を汲み、眠っている彼のところに持っていった。そっと彼の頭を持ち上げると、彼はゆっくり目を開いた。
「おはよ。お水だよ。少しだけでも飲んで。」
わたしがそう言って彼の口元に水の入った湯のみを持っていくと、彼はそれを一口飲む。
昨日も思ったけど、明るい光の中で見ると、さらにその整った顔立ちと白い肌がきれいに見える。大きくて真っ青な目はじっとわたしのことを見ていた。

「気分はどう?痛いところある?」
わたしの問いに、彼はわたしを見つめるだけだった。
な、なんだろう...。まるで、魂を吸い込まれそう。海の色よりも青くて、この泉の水よりも澄んでいる、宝石みたいな瞳。見つめられるだけで胸がドキドキする。

ゆっくりと彼はうでをあげて、わたしの頬に手を当てた。急に顔が熱くなるのは、彼の手が熱いから?それとも、見つめられて恥ずかしいから...?

「昨日は、すまなかった。」

苦痛に耐えながら絞り出したその声は低く、かれていた。
そう言った彼の手がわたしの頬から離れたかと思うと、彼はまた眠った。

わたしはドキドキしながら片手で支えていた彼の頭をゆっくり地面に下ろす。
どうしよう、まだ顔が熱い。触れられたところがジンジンする。

わたしはゆっくり立ち上がって、泉のそばに膝をつき、顔を泉の水の中に入れた。
冷たい水が気持ちいい...。
息が苦しくなって顔をあげ、銀色の着物の人の方を見ると、彼は静かに眠っていた。

「乙女にあんなことするなんて。恩知らず!」

そんな強がりを言っても、その人の眠る顔を見るとまた顔が熱くなる。
わたしはまた水に顔を突っ込んだ。




< 8 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop