転校先に同じ顔がいました
裏切り
ここを離れるまであと3週間をきっていた。
東京に行くことはもう決まっているのに。自分の気持ちにふんぎりがつかない。
「美那ー実乃里ちゃんがきたわよー」
『...はーい』
実乃里(ミノリ)とは、やっとできた唯一の友達。転校ばっかで友達の作り方を忘れて、ひとりで過ごしていた時に声をかけてくれた女の子。
「おはよう!美那!学校行こ!」
『ん、おはよ。じゃあ、お母さん、いってくるね』
「行ってらっしゃい」
正直、学校にすら行きたくないのが本音。
健人とは同じクラスだし、どんな顔して会えばいいのか毎日迷ってる。
ま、健人は何事となかったように話しかけてくるんだけど。なんか、引っかかるんだよなぁ。
「美那、引越しまでもう少しだね」
『あ、う、うん』
「寂しくなるなぁ。美那と離れたくない」
『私も。実乃里とも健人とも離れたくない』
健人の名前を出したとき、実乃里の顔が曇ったのに私は気付けずにいたんだ。