あの日の空の色
ある日の午後――。

社長に頼まれて、店の外にキレイに整列された車を洗車していると、店の前に一台の車が止まった。

黒いセダンの窓はフィルムが貼られて真っ黒で、昼間だというのに中もほとんど見えない状態。

《こえ~。社長の知り合いかな?》


――スーッと運転席の窓が下がり、顔を出したのは時田だった。


ビックリした!

アタシは手に持っていたブラシとホースをその場に投げて、車に駆け寄った。


『何やってんの!?何でここにいんの!?』

『何って。別にお前に用なんかねぇよ。ここの社長、オレの後輩なんだよ。社長いる?』

はぁ?
社長と知り合いなんて初めて聞いたし!

『いないよ!』

『ギャハハ!なにスネてんの?』

そう言った後時田は、
『ま、いいや。お前今度の土曜日暇だろ?付き合えよ。』

そう続けた。

それから、
『社長にオレが来た事だけ伝えといて。じゃあな!』

そう言って時田は車を出した。

…アタシの返事も聞かずに。

《なんて勝手なヤツ!》

そう思いながら、アタシの顔は緩んでいた。
水が出しっぱなしのホースは、コンクリの上であっちへこっちへ踊っていた。
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