あの日の空の色
急いでシャワーを浴び、髪をタオルで巻いたまま、雑に化粧をした。丁寧に顔を作ってる時間なんてなかった。ただ。失敗すると厄介だから、眉毛とアイラインだけは慎重に丁寧に描きこんだ。


デニムに足を突っ込みかけてるところに、時田から二度目の電話が入った。


『どこ行きゃいいのよ?』


…そう言えば、前に電話で話した時には、家の場所はだいたいの位置しか話してなかったっけ。


アタシはモタモタと足にデニムを通しながら、うちから30mほど離れた所に架かる橋までの道順を説明して、電話を切った。


今時田がいる場所から、その橋までは5分もかからなかった。


アタシは息切れしながらとにかく服を着て、髪に巻かれたタオルを床に投げた。
もう、髪に手を加えてる時間は無かった。


時田の勝手な性格からして、待ち合わせに遅れる人間を待つようには、とても思えなかった。
きっと5分と待たずに帰ってしまうだろう。

アタシは濡れたままの髪を手ぐしで整えて、あわてて玄関を飛び出した。


橋に向かって歩いて行くと、正面からこちらに近づく、真っ黒いセダンが見えた。


《間に合った…》

アタシはやっと大きく息を吸い込んだ。
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