あの日の空の色
男の運転する車の助手席に乗るのなんて、別に特別な事でもなんでもない事なのに、アタシは妙にドキドキしてた。
『どこ行くの?』
アタシの問いかけに、逆に時田が問いかけた。
『どこ行くのよ?』
『は?…だってどっか行くんじゃないの?付き合えって言ってたじゃん。』
『別に。暇だったから。』
『なにそれ~。』
『あ、ヤなの?ヤなら帰ってもいいよ。』
『帰りません~!』
時田は勝ちほこった様に笑い、車を出した。
あてもなく、ただ車は走り続けた。
走り始めて、そろそろ一時間経つっていうのに、アタシのドキドキはおさまらなかった。
『おい、いい加減どこ行くか決めろよ!』
…そんな事言われてもさ…。
『んじゃ映画!』
『無理!』
『んじゃゲーセン。』
『無理!』
《んじゃお前が決めろよ!》
いつもなら、軽く出るはずの言葉が、簡単には出なかった。
なぜか時田には強く出れない自分がいた。
時田が怖かったわけじゃない。
…ただ、嫌われて、時田との繋がりが切れてしまう事は嫌だった。