あの日の空の色
結局アタシの提案で、海沿いの大きな駐車場に車を乗り入れた。

そこには大きなスクリーン。

映画館は嫌だと言うから、車の中から映画がみられる“MOOVIX”へとやってきた。

なぜか時田は人の集まる様な場所を避けたい様だった。


映画が始まるまでには、まだ30分ほど時間があり、時田がトイレに行くと言って車の外に出た時、アタシは初めてソレに気がついた…

『足、どうしたの?怪我してんの?』

何気なく聞くアタシに時田が答える。

『怪我じゃねーよ。オレ、足がわりぃんだよ。』


…そう言ってトイレに向かう時田の後ろ姿に、アタシは絶句した。

“びっこをひく”、“足を引きずる”…

そんな次元じゃなかった。体を左右に大きく揺らし、体全体でバランスを取っていないと前には進めない様子。

トイレの入り口付近で体が前にバタッと倒れ、支えた手でまた体を起こして歩き出した。
気がつくと、アタシの目から涙が溢れてた。時田の不自由な体に、ショックを受けなかったわけじゃなかった。…でも、そんな涙じゃなかった。


――アタシが時田に心の全てを奪われた…
アタシが“恋に落ちた”瞬間だった。
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