あの日の空の色
#3 嘘と真実
時田がトイレから戻る前に、アタシは涙をぬぐって、その後も足の事には触れずにいた。
…映画の内容は、ほとんど頭に入らなかった。
アタシの胸は、なんとも言えない感情で熱くなってた。

《この人…。こんな不自由な体で、なんて自信満々に堂々と生きるんだろう?なんて強さだろう…》

アタシが時田に惹かれていた最大の理由は、きっとこの堂々と構えた力強さだったのだと思う。
今までに出会った、アタシが知ってる男には感じた事のない力強さがあった。
それは例えば、権力的に強いとか腕力が強いとか、そういう強さとはまったく違っていた。

“生きる強さ”だった。


アタシは時田の足が不自由だと知る前に、きっとその“強さ”を感じ、そこに惹き付けられていったんだと思った。
動揺しなかったと言えば嘘になる。
でも、足の不自由さを知った事で、逆にアタシは自分の気持ちに気づき、更に想いは強くなった。
時田の側で生きてみたいと思った。


誰かに対してそんな気持ちになったのは初めてだった。

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