あの日の空の色
その“時田”って男には、とにかくビックリしてしまった。

明らかに『仕事帰りです』って感じで、ベッタベタにあちこちペンキを付けた作業着姿で、これから女を交えて飲みますってのに、いきなりゴロ寝で迎えるヤツなんて、今まで見た事なかった。


だからアタシは言ったんだ。


『あの…。仕事仲間の席に戻らなくていいんですか?』


『は?オレはここで飲む為に来てんだよ!わりぃか?』


…ムッカ~!
なにコイツ!
なにコイツ!


アタシの顔色が変わったのに気づいたヨッチャンが、あわてて間に入ってきた。


『あ~、由香ちゃん気にしないで。コイツこーゆうヤツだから。態度デカイし口悪いし、言い方もキツイからさ。』


――へ~ぇ。


『別に気になんてなんないよ。おもしろいじゃん。』


アタシの中で、おかしな感情が芽生えた。

“対抗意識”だ。


自覚してる限りで、アタシは負けず嫌いで気が強く、友達の間でも“性格がキツイ女”ってイメージで通っていた。


『負けてたまるか!』
そんなバカらしい対抗意識がアタシの中に湧いていた。
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