白樺は空を見上げた。 そして、立葵は泣いていた。
 こいつは、妹の椛。いつも、赤いパーカー
を着ている。因みに二卵性双生児。
二卵性とは言っても,殆ど同じ様な顔をし
てるので、周りの人からは「本当にそっくり
だねぇ」などとよく囃される.
 別に嫌ではないが、俺はそんなに女顔か?
とよく疑問に思う。妹が男顔って事は99パー
無いから、俺が女顔なんだろう。
まあ、父さんよりも母さんに似てるって言
われるし。
 で、俺が戸を開けようとした所で,父さん
が呼び止めてきた。

「楓、帰りに荒屋ン家に寄って来てくれ。渡
すもんがあるんだと。」
「はぁ!?寄るって帰り反対じゃないか!」
「どうせ暇だろ?」
「…え?」
「頼んだぞ。」

冗談じゃない.ここは山の西側.
あいつン家は,山の東側.
寄って帰るとなると,二時間近く掛かる.
見たいテレビがあったのに…
 こんな風に結構無茶な事を平気で言ったり
するこの親父は、我が家こと,樋下神社の神
主だったりする。
 頭に血が昇ると手が付けられないが、普段
は面白可笑しい樋下家の大黒柱だ。
理不尽なことさえ言わなければ,いい親父
なんだが…

「私は,サキちゃんと帰るの楽しみだよ?」

そうだ,荒屋家に寄るとなると,あいつと
一緒に帰る事になるんだな.
でも…

「お前まで来る必要無いんじゃないか?」
「ううん,お兄ちゃん.それは違うよ.
私とお兄ちゃんが一緒に帰るのは宿命なの…
私とお兄ちゃんは二つで一つ…二人がそれ
を忘れぬ限r」
「二人ともいい加減にしないとバスが来るわ
よ。」

ないす,母さん。よく話を止めてくれた。
危うく,長々しい乙女モードに入られるとこ
ろだった.

「「行ってきま〜す」」

 そう同時に言うと、二人揃って家を出た。

いや〜,空気が旨い……寒いけど.
鳥居をくぐると前にバス停、その向こうに
は初夏の囲目市が広がっていた。
俺たちの住むこの囲目市は、北と南を山に
挟まれ、西に行けば海がある人口5万人強
の市だ。
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