白樺は空を見上げた。 そして、立葵は泣いていた。
 山と海を使った観光事業、市立のパイロッ
トスクールを中心とした学芸都市の二点を売
り出し文句に、人口は少ないが、他の追随を
許さない程の地位を築いたらしい。
かくいう俺達も囲目市立総合学校中等部の
二年生だ。
 公立でありながら小中高一貫校と言うのは
少し奇妙に思うかもしれないが、将来的には
公立でも小中一貫校を増やそうとしているら
しいから、ここはその先駆けなのだろう。そ
ういう所が囲目総合のパイロットスクールた
る所以だと思う。
 また、この市には私立を除き他に学校が無
い。
付け加え,この学校は囲目市の丁度中央に
位置し、初等部から高等部の棟まで全て同じ
敷地内に存在する。
そのため、市内の児童・生徒はほぼ全てこ
の学校に通うことになる。
 だから俺達の家が山にある様に、学校から
遠い所に住んでいる場合バス通学となる。
 山と山の間の街に住んでいる連中なら、自
転車等でも通学できるが.
 因みにもちろんこのバスは市営。
一般人も乗れるが生徒達のために市の運営で
巡回している。

ブロロロロォッ

 バスが着くか着かないかという所で何とか
停留所に間に合ったようだ。


「ふー、何とか間に合ったな。」
「んもう、お兄ちゃんがいつも寝坊するのが
いけないんでしょ。」
「違うぞ椛。俺のは寝坊じゃない。周りが早
過ぎるんだ。言わば俺があの時間まで寝てい
るのは当然の事。大自然の摂理。」
「またまたそんな事言って…どうせ遅くまで
ゲームでもしていたんでしょう?」
「フッ笑止な。ゲームじゃなくて勉強だ。お
前と一緒にするな。」
「え?私ゲームで夜更かしとかしないよ?」
「イヤイヤ。それじゃない。お前、突然本を
大量買いして来たと思ったら一日で読み終え
ちまうじゃねぇか。」
そう、こいつは異常な迄の読書家。
 何せ一月に読む本が百冊以上。
「そ、それは…当然と言うか大自然の摂理と
言うか…」
「はははっ俺と同じ事言ってるじゃン。」

 こう言うところやっぱり双子か。

「うぅ~お兄ちゃんのクセに…」

そんな会話をしながら、バスに乗り込み,
そして、俺は単語帳を取り出し,暗記し始め
る。
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