白樺は空を見上げた。 そして、立葵は泣いていた。

パチパチッ

ゴォオウッ

こんな筈じゃなかった。

パチパチッ

ボゥゥボウ

これが夢なら･･･
そう何度も願った。

パリンッ

カチッカチッ

「俺じゃない。」
（いや、俺だ。）

「俺がやったんじゃない！」
（俺が殺した。）

「違う違う違う違う！」
（何も違わない！）

「ぐぅ、おぇぇえええぇえっっかはぁっ」
何度目かの嘔吐。
饐えた様な腐敗臭と共に吐き出される黄色い
…胃液。
口中に広がる嫌な酸の味。

まるで、そうまるで，地獄としか思えない光
景で、ひたすら、足掻き苦しみ否定し這いず
りもがき恐怖し、たまらず逃げようとした。

ウーウー
ファンファン

遠くの方で緊急車両が通行することを知らせ
る音がする。

これは夢なんだ。

そう夢なんだ。
こんなに悲しい事が在る訳が無い。
こんなに苦しい事が在る訳が無い。

そうだ。夢だ。
なら早く覚めよう。