空まで届け
先生嘘だよね。嘘っていってよ。
外からは階段を駆け上がる足音が聞こえる。
お父さんだ。教室のそとに現れたのは
汗だくで青ざめた私の見たことない
お父さんだった。
「早く行きなさい」
先生は曇った表情のまま私にそういった。

私は傘を実桜に渡し、お母さんの病院へと
急いだ。
「お母さんね、最近あんまり体調よくなかったみたいでね。
ここ何日かずっと寝たきりだったそうだ。」
車を走らせながらお父さんは言う。
「なんで言ってくれなかったんだろうな」
お父さんの目には涙が溜まっていた。
「笑顔にさせたかったんじゃないかな。」
私のふいに出た言葉だった。
「私はお母さんの笑った顔を見るだけで
笑顔になれた。会えない時もお母さんを
思い出すだけで毎日笑顔になれたから。」
「そうなのかもしれないな」
そういうとお父さんは私に気づかれないように
静かに泣いた。
私も込み上げてくるものを抑えることは

できなかった。
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