巡逢~茜色の約束~
そう名乗った彼女は、沈む夕日に負けないくらいの笑顔で。

俺には少し、眩しすぎた。



「……あんたは、今来たのか?ここに」



音が全くしなかったことに疑問を抱き訊ねてみると、彼女は笑ったまま首を振った。



「そこの上にいたの。貴方が来る前から」



言いつつ指差されたのは、ペントハウスだった。



……なるほど、誰も来ないって高を括って油断してた俺が馬鹿だったわけか。

完全に俺の落ち度だ。



──でも。

もう一つ聞きたいことがある。



「あんた、ここの生徒じゃねえよな?」



普段なら気にも留めないこと。

どうだっていいってその場を去るだろう。

だけど、



「こんなとこで何してた」



制服がブレザーであるうちのような高校では必ず目立つセーラー服に、校則ではローファーと決められ、禁止されているスニーカー。

さっきの言葉を聞かれてしまったうえに不審な人物なら、無視は出来なかった。



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