巡逢~茜色の約束~
大阪か……。

そりゃ見たことない筈だ。

……いや、見たことがあったとしても忘れてるだろうな。



「ちょっと親と喧嘩してさぁ。勝手に戻って来ちゃったんだ」

「1人で?」

「そう、1人で。来たはいいけど、行くあても目的もなくってさ。どうしようって考えてたらふと、祖母が通ってた高校を思い出して」



それで探検、と冗談めかして笑う彼女に、俺は盛大な溜め息を吐いた。



「ったく……ただの家出娘かよ」

「娘って……さっきちゃんと名乗ったでしょ!美生よ、美生!」

「美生よ、って言われても……俺等別に関わることねえし」



ゆっくりと立ち上がると、今度は彼女が俺を見上げる形になった。

俺が175だから……155くらいか?

って、そんなのどうでもいいんだけど。



「じゃあな、家出娘」



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