巡逢~茜色の約束~
「……ふーん」



今は、か……。



「……何をどう思ったら、好きになんの?」

「何をどうって?」

「……好きになるには好きになるなりの理由があるってことだろ」



投げ掛けた疑問に、肩を並べて歩く桜井は口角を上げた。

そして駆け足で少し先を行き、人差し指を立てる。



「それはえらい間違いやで、千速」

「え……」

「好きになるのに、理由なんかないねん」



俺の言葉を、桜井は真正面から否定する。

ずっと、笑顔のままで。



「コイツはないわ、とか思ってても、気付いたら好きになってるもんやで。その気持ちを自覚したら、もう一発。どんどん好きになっていく」



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