巡逢~茜色の約束~
「あ、千速くん!おかえりなさい!」

「ただいま。……って、こんな時間に何処行ってたんだよ」



もう暗いのに、とは言えなかった。



「お醤油切らしてたの忘れてて」

「そんなの……明日でいいのに」

「忘れちゃいそうだったから」



立ち止まった美生の隣に並び、持っている袋を掻っ攫う。

そのまま歩いていく俺の後ろを、美生は駆け足で追ってきた。



「いいよ、持たなくて」

「なんで」

「なんでって……別に重くないし」

「それだけ?」

「え……。や、千速くんに悪いし……」

「そんな理由なら返さねえぞ」



頑なに譲らない俺を諦めたのか、美生は小さくありがとうと呟き、俺の半歩後ろを歩いた。



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