巡逢~茜色の約束~
ぐらぐら、俺達は形ない境界線の上を歩く。

ほんのちょっとの出来ごとで崩れてしまいそうなそんな関係に、少し不安になったりもして。



「今日の晩御飯はね、秋刀魚だよ!千速くん、食べたいって言ってたでしょ?」

「……あぁ」



夜空に浮かぶ三日月が、一定の距離を保って歩く俺達を弱々しくも優しく照らした。





食卓に並んだ秋刀魚を平らげ、ソファーで寛ぐ。

そんな俺の隣に、洗い物を終えた美生が腰を下ろした。



「ドラマ?」

「……いや、映画。借りてきた」

「へぇ。今度はどんなやつ?」

「んー、多分アクション」

「アクションかぁ。あんまり観たことないなぁ」



言いつつ、美生はテレビを食い入るように見る。



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