巡逢~茜色の約束~
仕事の合間に帰ってきた父親に、俺はグローブをせがんだ。

もしかしたら一緒にやってくれるかも、なんて淡い期待を抱きながら。

……けど、そんなことある筈なかった。



さっきも言った通り、うちは金だけはあってさ。

おもちゃを買い与えるときと同じように、福沢諭吉を渡された。

って、今思えば小2の子どもに万札渡すのもどうかと思うけど。

それで買って来いって。

自分はもう仕事に戻るって、そう言ってまた家を出て行ったんだ。



悔しかった。

周りのヤツ等には当たり前のように注がれている愛情を、俺は貰ったことすらなくて。

親子でキャッチボールなんて、夢見るだけ馬鹿だったんだって。



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