巡逢~茜色の約束~
「……悪い、パス」



鞄を手に、2人に背を向けて教室を出ようとする。

と、鞄を持っていない右手を力強く掴まれた。



「……離せよ」

「……嫌」

「……」

「最近の千速……変やで。全然笑わんし、話振っても──」

「それが、1ヶ月前までの俺だったよ」



振り返ることなく、冷たく言い放つ。

笑えてないことも、会話がずっと上の空なことも、自覚してる。

自覚してるけど、他のことで頭がいっぱいで、どうすることも出来なくて。



桜井や相川には悪いけど、煩わしいって……そう思った。



最低だよなぁ。

気にかけてくれる友達にそんな感情を抱くなんて。



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